新卒で看護師として働き始めてまもなく、「もう辞めたい」「いったん休んだほうがいいのかもしれない」と考え始める人がいます。結論から言うと、休職を考えること自体は甘えや逃げではなく、心と体が負担のサインを出している状態として受け止め、早めに受診と手続きの確認へ進むことが大切です。
この記事は、休職を考え始めてから決めるまでの実務を、順番に整理した中立的なガイドです。よくあるきっかけの整理、受診と診断書、職場への伝え方、休職の手続き、傷病手当金の条件と申請、休職中の過ごし方の一般的な注意、復職か転職かを考える判断軸、相談先までをまとめました。個人の体験談ではなく、全国健康保険協会(協会けんぽ)や厚生労働省「こころの耳」など公的な案内で確認できた内容を軸にしています。
先に大切な点を挙げます。体調の判断と診断は医師が行うもので、この記事は診断や治療を示すものではありません。休職制度の細かな扱いは職場ごとに異なり、傷病手当金も加入している健康保険によって窓口や細部が変わることがあります。「自分の場合はどうなるか」は、主治医、職場の担当者、加入先の健康保険に確認してください。
数字は、文中でリンクした公式ページで確認できた内容に限っています。確認日は2026年10月12日です。制度は改定されることがあるため、手続きの前には最新の公式ページを開いて見比べてください。
新卒で休職を考え始めたとき、最初に整理しておきたいこと
休職とは、病気やけがなどで働くことが難しい期間、雇用関係を保ったまま仕事を休む制度のことで、取得の条件や期間は職場の規定で決まります。
休職を考えるとき、頭の中では「辞めるか続けるか」という大きな問いが先に立ちがちです。ところが実際には、その手前に確認すべき段階がいくつもあります。いきなり結論を出そうとせず、次の順に整理すると、判断が楽になります。
まず、いまの体調を言葉にします。眠れない、食べられない、朝に起き上がれない、出勤前に動悸がする、といった変化がいつから続いているかを、メモに書き出してください。次に、その状態が続く原因として思い当たる職場の事情があるかを書きます。ここで原因を断定する必要はありません。「思い当たることがある」程度で十分です。
そのうえで、受診して医師に相談します。休職するかどうか、いつまで休むかは、医師の意見と職場の規定の両方がそろって初めて具体的に決まります。厚生労働省の「こころの耳」も、メンタルヘルス不調は休養と専門家による治療の両方が大切で、主治医から休業を勧められた場合はそれに従うのが賢明だと案内しています(職場復帰のガイダンス「メンタルヘルス不調の治療と休業」)。
この段階で決めなくてよいこと
休職に入る前の段階で、退職するかどうか、転職先を探すかどうかまで決める必要はありません。決める順番は、受診、診断書、職場への連絡、休業の開始、傷病手当金の申請、そして回復してからの復職か転職かの判断です。先のことは、休んで体調が落ち着いてから考えたほうが、冷静に比べられます。
仮の例として、メモを次のように作っておくと、受診の場でも職場への連絡でも使えます。日数や時期は一例です。
| メモの項目 | 書き方の例(仮の例) |
|---|---|
| 体調の変化 | 眠りが浅く、朝に動悸がして、食事の量が減っている |
| いつから | 配属後しばらくしてから、少しずつ強くなった |
| 仕事で困っていること | 質問や報告をしづらい雰囲気がある |
| いま相談できる人 | 家族、同期、職場の相談窓口、かかりつけの医療機関 |
| 医師に聞きたいこと | 仕事を続けて大丈夫か、休む場合の目安の期間 |
新卒看護師が休職を考え始めるきっかけの整理|職場・体調・生活の3方向
休職を考えるきっかけは、職場の状況、体や心の変化、生活面の不安の3方向に分けて見ると、いま何が負担になっているかを切り分けやすくなります。
「なんとなくつらい」という状態のままだと、相談する側もされる側も何から話してよいか分かりません。きっかけを方向別に分けておくと、受診の場でも職場への相談でも、具体的に伝えられます。以下は一般的な整理であり、誰にでも当てはまるものではありません。当てはまる項目が少なくても、つらさが続くなら相談してよい状態です。
職場の状況に関わるもの
- 指導や人間関係で、質問や報告をしづらい雰囲気がある
- 夜勤や不規則な勤務で、生活のリズムが整わない
- 覚えることが多いのに、振り返りや確認の時間が取れない
- ミスへの不安が強くなり、出勤前から緊張が抜けない
体や心の変化として表れるもの
- 眠れない、または朝に起き上がれない
- 食欲が落ちる、体重が変わる
- 休日も仕事のことが頭から離れない
- 以前は楽しめたことに関心が持てない
生活面の不安として表れるもの
- 休んだら生活費はどうなるのかという不安
- 奨学金や家賃などの支払いが続くことへの心配
- 周囲にどう思われるか、同期に迷惑をかけないかという気がかり
厚生労働省の「こころの耳」は、適応障害を、環境の変化によるストレスが個人の順応力を超えたときに生じる情緒面や行動面の不調として説明しています。うつ病などの診断がつくには至っていない状態とされています。ただし、実際にどの状態にあたるかは医師が判断することです(こころの耳「こころの病気 解説」)。自分で病名を決めるのではなく、体や気持ちの変化をそのまま伝えて、医師に判断を任せてください。
適応障害そのものについては、受診から回復までの流れと相談先を整理した記事もあります。あわせてどうぞ(「仕事に行けない…」看護師の適応障害|受診から回復までの流れと相談先)。
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入職2ヶ月で「もう無理」と思った瞬間|ベッドから起き上がれなかった朝
「もう無理」と感じる瞬間とは、気合や努力では立て直せないと感じるほど、心身の負担が日常の動作に表れたときの感覚のことです。

この見出しにあるような場面、つまり朝に体が動かない、出勤のことを考えるだけで動悸や吐き気がする、という状態は、限界のサインとして知られています。ここでは、そうしたサインを一般的に整理します。病名の判断ではなく、受診を考える目安として読んでください。
日常の動作に表れる変化
起床、着替え、通勤といった毎日の動作が極端に重くなるのは、見逃したくないサインです。目が覚めても布団から出られない、玄関で足が止まる、通勤中に涙が出る、といった変化が繰り返されるなら、一度立ち止まってよい状態です。
「頑張れば戻る」と思えなくなったとき
疲れているだけなら、休日の睡眠や気分転換で戻ります。休んでも気持ちが晴れない、休日にもずっと仕事のことを考えてしまう、という状態が続くなら、休養だけで解決するのかを医師と一緒に確認する価値があります。
受診を急いだほうがよい場面
「消えてしまいたい」といった考えが浮かぶ、自分を傷つけたい気持ちが出る、といった場合は、我慢せずすぐに医療機関や公的な相談窓口に連絡してください。夜間や休日でも相談できる窓口は、記事後半の相談先の項目にまとめています。
限界のサインに気づいたとき、「周りに迷惑をかける」という思いが休むことをためらわせます。ただ、「こころの耳」は、無理を重ねて働き続けても成果は上がりにくく、かえってミスや不安全行動につながるおそれがあると案内しています(職場復帰のガイダンス「メンタルヘルス不調の治療と休業」)。早めに休養と治療に入ることは、患者さんや同僚にとっても安全につながる、という見方もできます。
適応障害の診断と休職|傷病手当金で生活を守る方法
適応障害の診断とは、医師が診察をして、ストレスとなる出来事と症状の関係を踏まえて行う医学的な判断のことで、診断書はその結果を職場などに伝える書類です。

受診するときに伝えること
心療内科や精神科を受診するときは、前の項目で作ったメモを持っていくと、短い時間でも状況を伝えられます。伝える内容は、体調の変化とその時期、仕事での負担、睡眠や食事の状態、すでに試した対処です。「うまく話せないかもしれない」と不安なら、メモを見せるだけでも構いません。
なお、医療機関によって予約の取り方や初診までの待ち時間は違います。「こころの耳」には全国の医療機関を探せるページも用意されています。
診断書と休職の関係
診断書は医師が必要と判断した場合に作成されます。休職の手続きでは、診断書の提出を求める職場が多く、厚生労働省の「職場復帰支援の手引き」に沿った流れでも、労働者が主治医の診断書(病気休業診断書)を管理監督者に提出して休業が始まる、と整理されています(こころの耳「15分でわかる職場復帰支援」)。ただし、診断書の書式、提出先、休職できる期間は職場の規定によって異なります。
休職中の生活費の仕組みを知っておく
休職中の不安として最も大きいのは、生活費かもしれません。会社員などが加入する健康保険(公務員は共済組合)には、病気やけがで働けない間の生活を支える傷病手当金があります。協会けんぽのページでは、業務外の病気やけがの療養のための休業であること、仕事に就けないこと、待期を含めて4日以上仕事に就けなかったこと、休業期間に給与の支払いがないことの条件がすべて満たされる場合に支給されると案内されています(協会けんぽ「傷病手当金」)。条件の詳しい読み方と申請は、後ろの項目で整理します。
休職の取り方や、診断書をもらったあとの動きについては、手続きとお金を広くまとめた記事もあります(看護師が休職を考える前に知っておくべき手続きとお金・復帰)。
休職の手続きの流れ|誰に何を確認するか
休職の手続きとは、受診から診断書の提出、職場への連絡、休業の開始、休業中の連絡までを、主治医・職場・健康保険の窓口と進める一連の流れのことです。
休職の手続きは、一人で全部を抱えると負担が大きくなります。窓口ごとに確認することが違うので、先に整理しておくと動きやすくなります。次の表は一般的な整理であり、職場によって順番や書類は変わります。
| 確認する先 | 確認すること | 伝え方の目安 |
|---|---|---|
| 主治医 | 仕事を続けてよいか、休む場合の目安の期間、診断書の発行 | 体調のメモを見せて、仕事の内容も一緒に伝える |
| 職場の上司・人事・総務 | 休職制度の有無、休める期間、提出する書類、休職中の給与の扱い | 就業規則を見たい旨を伝え、診断書が出たら提出する |
| 加入している健康保険の窓口 | 傷病手当金の申請書の書き方、提出先、受け取り方法(協会けんぽ「傷病手当金」) | 職場の担当者を通して確認することが多い |
| 家族や身近な人 | 生活面の負担、通院の付き添い、連絡の窓口 | 頼みたいことを具体的に伝える |
| こころの耳などの公的窓口 | 誰に相談してよいか分からないときの相談先 | 電話やSNSで、気持ちを整理する目的で使う |
休業の期間や、その間の保障、復職するときの手続きは、職場ごとに異なります。「こころの耳」も、休業前に職場の規定を確認し、治療と休養に専念するよう勧めています(職場復帰のガイダンス「職場との連絡、相談等」)。
就業規則で確認したい項目の例
休職の相談を職場に切り出す前に、就業規則や雇用契約書で次の点を確認できるとスムーズです。見つからない場合は、人事や総務に「休職制度について知りたい」と聞いて構いません。
- 休職制度があるか、取得できる条件は何か
- 休職できる期間の上限と、延長の有無
- 休職中の給与や賞与の扱い、社会保険料の負担の扱い
- 診断書の提出時期と、復職時に必要な書類
- 休職の期間が終わっても復職できなかった場合の扱い
最後の項目は特に大切です。期間の上限や、満了後の扱いは職場によって差があります。先に確認しておくと、休職中の不安が減ります。
休職に入る前に手元で整えておくこと
休職に入ると、職場に出向く機会が減ります。そのため、入る前に最低限の連絡手段と書類の置き場所を決めておくと、あとで慌てずに済みます。たとえば、連絡の窓口になる担当者の名前と連絡先、診断書の控えや通院の予定を、一つの場所にまとめておきます。私物を職場に残している場合は、受け取り方も先に相談しておくと、気持ちの負担が減ります。
これらは、体調が重いときほど後回しになりがちです。ただし、すべてを一度に整える必要はありません。できる範囲で、家族や信頼できる人に手伝ってもらっても構いません。
職場への伝え方|上司・人事に休職を切り出すときのポイント
職場への伝え方とは、診断書や医師の意見を根拠に、休む意思と必要な手続きを簡潔に、記録が残る形で上司や人事へ共有することです。
休職を職場に伝える場面は、緊張しやすいところです。ポイントは三つあります。感情を全部説明しようとしないこと、事実を短く伝えること、記録が残る方法を使うことです。
伝える順番と手段
直属の上司に伝えるのが一般的ですが、上司との関係が負担の原因になっている場合は、人事や総務、職場の相談窓口を先に使っても構いません。口頭で話すことが難しいときは、メールや書面で伝えると、言った言わないの行き違いを防げます。診断書を受け取ったあとであれば、診断書を添えて連絡すると話が進みやすくなります。
連絡文の例(仮の例)
次の文面は仮の例です。実際の事情に合わせて言葉を調整してください。
お疲れさまです。体調のことでご相談があり、ご連絡しました。ここ最近、睡眠や食事に影響が出ており、医療機関を受診しました。医師から、しばらく休養が必要との意見をいただいています。診断書を受け取り次第、提出いたします。休職の手続きについて、必要な書類や流れを教えていただけますでしょうか。ご迷惑をおかけして申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。
この例のように、「体調の事実」「受診の事実」「医師の意見」「お願いしたいこと」の四つを短く並べるだけで足ります。症状の細かい説明や、職場への不満の詳細は、この連絡に入れなくて構いません。話したいことがあれば、落ち着いてから別の機会に伝えればよいのです。
引き止められたときの考え方
「いま人が足りない」「もう少し頑張れないか」と引き止められることがあります。そのとき、その場で結論を出す必要はありません。「医師の意見に沿って判断したいので、診断書を確認してからお返事します」と、判断の軸が医師の意見にあることを伝えると、気持ちの負担が小さくなります。
人間関係や指導のあり方に悩んでいる場合の整理は、別の記事も参考になります(看護師の燃え尽き症候群(バーンアウト)対処法|壊れる前に知っておきたいこと)。
傷病手当金の条件・金額・期間・申請|公式ページで確認できる内容
傷病手当金とは、健康保険の被保険者が業務外の病気やけがで仕事に就けず、給与が支払われない間の生活を支えるために、健康保険から支給される給付のことです。
ここでは、協会けんぽ「傷病手当金」のページで確認できる内容を整理します。加入しているのが健康保険組合などの場合は、窓口や細部が異なることがあるため、加入先の案内も見てください。
支給される条件
| 条件 | 公式ページの内容(協会けんぽ) |
|---|---|
| 療養の原因 | 業務外の病気やけがの療養のための休業であること。業務上や通勤災害は労災保険の給付対象とされています。 |
| 仕事に就けない状態 | 療養担当者の意見などをもとに、仕事に就けない状態かどうかが判断されます。 |
| 休んだ日数 | 連続する3日間(待期)を含み、4日以上仕事に就けなかったこと。 |
| 給与の扱い | 休業した期間について給与の支払いがないこと。給与が傷病手当金より少ない場合は差額が支給されます。 |
| 確認先 | 協会けんぽ「傷病手当金」 |
待期の3日間には、有給休暇や土日祝日などの公休日も含まれ、給与の支払いの有無は関係ない、と案内されています。休んだ3日間が連続していないと待期は成立しません(協会けんぽ「傷病手当金」)。
金額の計算と、仮の例
協会けんぽの案内では、1日あたりの金額は、支給開始日以前の12か月間の標準報酬月額の平均を30で割った額の3分の2とされています。標準報酬月額とは、社会保険料の計算に使う報酬の区分で、毎月の給与明細や加入先の通知で確認できます。公式ページの計算例では、平均が17万円の場合、17万円を30で割って5,670円(10円未満は四捨五入)、その3分の2で3,780円になります(協会けんぽ「傷病手当金」)。
支給開始日以前の加入期間が12か月に満たない場合は、直近の各月の標準報酬月額の平均と、前年度9月30日時点の全被保険者の標準報酬月額の平均額のうち、低いほうを使うとされています。この平均額は、支給開始日が2025年4月1日以降の場合は32万円です。入職して間もない新卒の場合は、この扱いが関わる可能性があるので、加入先で確認してください。
次は、公式の計算方法を使った仮の例です。実際の金額ではありません。
| 計算の手順 | 仮の例(標準報酬月額の平均が24万円の場合) |
|---|---|
| 平均額を30で割る(協会けんぽ「傷病手当金」の計算方法) | 24万円 ÷ 30 = 8,000円 |
| その3分の2を求める | 8,000円 × 2/3 = 約5,333円(1円未満は四捨五入) |
| 30日分の目安 | 5,333円 × 30日 = 159,990円 |
| 給与が一部支払われた場合 | 支給額との差額が支給される(公式ページの案内) |
この表の「30日分」は、日額に日数をかけた計算の見せ方であり、実際には支給対象になった日数分が支給されます。加入先や標準報酬月額によって金額は変わります。
支給期間と申請の流れ
支給期間は、支給を開始した日から通算して1年6か月とされています(協会けんぽ「傷病手当金」)。申請には「健康保険傷病手当金支給申請書」を使い、提出先は加入している協会けんぽの支部です。申請書には、本人が書く欄のほか、事業主や医療機関に記入してもらう欄があります。職場の担当者に「傷病手当金の申請をしたい」と伝えると、書類の準備を案内してもらえることが多いです。
手順をまとめると、診断書や医師の意見をもとに休業に入り、申請書を用意して職場と医療機関に記入を依頼し、加入先に提出する、という流れです。書類の書き方は協会けんぽの申請書ページで確認できます。
退職後の扱いについては、後ろの「退職を考えるときに知っておきたいこと」で触れます。
休職中の過ごし方|一般的な注意と、回復を急がない考え方
休職中の過ごし方とは、仕事から気持ちを離して休養を優先し、主治医と相談しながら、生活のリズムを少しずつ整えていくことです。
休職に入ると、「何もしていない自分」への罪悪感が出てくることがあります。しかし、休むことは治療の一部です。ここでは、「こころの耳」の案内を軸に、一般的な注意を整理します。
仕事から離れて休む
「こころの耳」は、休業に入ったら仕事は一切せず、仕事から気持ちを切り離してゆっくり休むことを勧めています(職場復帰のガイダンス「メンタルヘルス不調の治療と休業」)。仕事のメッセージを確認し続けたり、業務の引き継ぎ資料を作り込んだりするのは、休養になりません。引き継ぎが必要なら、休職に入る前に最低限を済ませ、休職後は職場の担当者に任せましょう。
職場からの連絡への向き合い方
休業中に職場から連絡が来ることがあります。同じ「こころの耳」のページでは、体調が安定しないうちに読んだり返信したりすると負担になりやすいため、しばらく返信できないと伝えて連絡を控えてもよいと案内されています(職場復帰のガイダンス「職場との連絡、相談等」)。連絡の窓口を一人に決めてもらう、連絡は週に一度のメールだけにしてもらう、といった取り決めは、人事や上司に相談してよい事柄です。
休職中の連絡で迷いやすいのは、職場への近況報告のタイミングです。決まりがない場合は、「月に一度、メールで体調の概要だけ伝える」のように、頻度と手段を職場の担当者と先に合意しておくと、毎回悩まずに済みます。報告の内容は、通院を続けていること、医師から指示された療養の方針、次の診察の予定程度で十分です。詳しい症状や、職場への思いを書く必要はありません。
回復を急がない
休業が長引くと焦りが出てきます。「こころの耳」は、休養が半年から一年以上に及ぶこともまれではないこと、焦って復帰すると再び悪化して再休業となり、休み続けていた場合より働けない期間が長くなることがあると注意を促しています(職場復帰のガイダンス「メンタルヘルス不調の治療と休業」)。症状が軽くなっても、復帰時期は自己判断で進めず、主治医とよく相談することが大切です。
休職中の生活を整えるための小さな目安
何をしたらよいか分からないときは、主治医に「いまやってよいこと」を聞いてください。そのうえで、起きる時間と寝る時間を大きくずらさない、食事を抜かない、外の光を浴びる機会を作る、といった基本的なことから戻すのが一般的な考え方です。調子が悪い日は、何もしなくて構いません。比べる相手は、他人ではなく、昨日の自分です。
休職中の過ごし方を、生活・手続き・復帰準備の視点でさらに詳しく知りたい方は、こちらもどうぞ(看護師の休職中の過ごし方ガイド|生活・手続き・復帰準備の7つの視点)。
復職か転職か|休職中と回復後に考える判断軸
復職か転職かの判断軸とは、体調の回復度、職場の環境が変わる見込み、生活面の条件、本人の希望を並べて、どちらが自分に合うかを比べるための観点のことです。
復職するか、転職するかは、休職を決めた直後に答えを出す必要はありません。体調が安定してから、落ち着いて比べるほうが、後悔の少ない選択になります。ここでは、答えを示すのではなく、比べるための軸を整理します。どちらが正解ということはありません。
| 判断軸 | 復職を考える場合に確認すること | 転職を考える場合に確認すること |
|---|---|---|
| 体調の回復 | 主治医が復帰可能と判断しているか | 主治医に、転職活動を始めてよい時期を聞いたか |
| つらさの原因 | 原因となった状況が変わる見込みがあるか(配置、指導体制、勤務形態) | 原因が職場固有のものか、仕事内容そのものかを整理したか |
| 職場の支援 | 復職後の業務量や勤務の配慮を相談できるか | 転職先の勤務形態や教育体制を事前に確認できるか |
| 生活面 | 休職の期間の上限と、傷病手当金の支給期間を把握したか | 退職後の保険、手当、次の勤務開始までの生活の見通しを立てたか |
| 本人の希望 | この職場で続けたいと思う理由があるか | どんな働き方なら続けられそうかを言葉にできるか |
判断メモの記入例(仮の例)
次は、判断軸を自分用のメモに落とした仮の例です。結論を決めるためではなく、考えを整理する目的で使ってください。
- つらさの原因として近いのは、指導体制と夜勤の頻度だと思う
- 主治医には、回復を見ながら復職の時期を相談する予定
- 配置換えや勤務形態の配慮が相談できるなら、復職も選択肢に入る
- 配慮が難しいと分かった場合は、別の職場や働き方も調べる
- どちらにしても、いまは体調を戻すことを優先する
職場復帰の流れを知っておく
復職を選ぶ場合、厚生労働省の手引きに沿った流れを知っておくと、見通しが立ちます。「こころの耳」の整理では、職場復帰支援は5つのステップで示されています。
| ステップ | 内容(こころの耳の整理) |
|---|---|
| 第1ステップ | 病気休業開始と休業中のケア。診断書の提出で休業が始まり、事業者が手続きと復帰支援の手順を説明する |
| 第2ステップ | 主治医による職場復帰可能の判断。復職の意思が伝えられると、主治医の診断書の提出を求める |
| 第3ステップ | 職場復帰の可否の判断と、職場復帰支援プランの作成 |
| 第4ステップ | 最終的な職場復帰の決定 |
| 第5ステップ | 職場復帰後のフォローアップ |
| 出典 | こころの耳「15分でわかる職場復帰支援」 |
この流れは厚生労働省の手引きに沿った一般的なものです。実際に職場がどこまで整備しているかは、職場によって異なります。また、「こころの耳」は、復帰の判断で「もう働ける」と感じても、主治医の意見に耳を傾け、普段の様子を見ているご家族の意見も参考にするよう勧めています(職場復帰のガイダンス(働く方・ご家族の方へ))。
復帰への不安や、復帰しないという選択肢については、次の記事も参考になります(看護師の休職から復帰が怖い時の対処法|復帰しないという選択肢もある)。
退職を考えるときに知っておきたいこと|手続き・保険・傷病手当金の継続
退職を考えるときの確認事項とは、辞める前に、退職後の収入や保険の扱いを、職場と加入先に確かめておくことです。
休職の途中や回復後に、「この職場を離れる」という判断に進むことがあります。その場合は、辞める前に確認しておくとよい点があります。ここで書くのは一般的な整理であり、個別の扱いは職場や加入先に確認してください。
傷病手当金は退職後も受け取れることがある
協会けんぽの案内では、次の条件を満たすと、退職して被保険者の資格を失った後も引き続き傷病手当金を受けられるとされています。資格喪失日の前日までに、任意継続や国民健康保険などの期間を除く被保険者期間が継続して1年以上あること、資格喪失日の前日に傷病手当金を受けている、または受けられる状態であることです。ただし、一度仕事に就ける状態になった後に、再び就けなくなった場合は支給されないとも書かれています(協会けんぽ「傷病手当金」)。
新卒で入職して間もない場合、被保険者期間が1年に届いているかどうかは、条件に直接関わります。退職日を決める前に、加入先へ確認してください。退職日の決め方で扱いが変わる可能性があるため、自己判断で進めないことが大切です。
退職の手続きと、退職後のお金
傷病手当金を継続して受けられる条件は、前の項目で示した協会けんぽ「傷病手当金」で確認できます。退職を伝える書類や手順は、就業規則に沿って進めます。書き方や出し方は、別の記事で整理しています(看護師の退職届の書き方と出し方|円満退職)。退職後の失業給付と年金の関係を知りたいときは、こちらを見てください(看護師が失業保険を受けると年金は減る?基本手当との調整と手続きの順番)。
退職を決める前に、傷病手当金をどの範囲で受けられるか、健康保険をどうするか、次の勤務までの生活費をどうまかなうかを、一度紙に書いて整理しておくと安心です。
一人で抱えないための相談先
相談先とは、休職や働き方に悩んだときに、医療、職場、健康保険、公的な窓口のそれぞれで、役割に合わせて頼れる先のことです。
誰に何を相談できるかを、役割ごとに整理します。
| 相談先 | 相談できること |
|---|---|
| 主治医・かかりつけの医療機関 | 体調、休養の必要性、診断書、復帰の時期 |
| 職場の上司・人事・産業医など | 休職制度、書類、休職中の連絡、復職の進め方 |
| 加入している健康保険(協会けんぽなど) | 傷病手当金の条件と申請(協会けんぽ「傷病手当金」) |
| こころの耳の相談窓口 | 働く方やご家族の悩み全般(電話・SNS・メール) |
| 家族や信頼できる人 | 生活面の支えと、気持ちの聞き役 |
「こころの耳」の電話相談は、フリーダイヤル0120-565-455です。受付日時は、平日(月曜から金曜)が17時から22時(受付は21時50分まで)、土曜日・日曜日が10時から16時(受付は15時50分まで)で、祝日、振替休日、年末年始(12月29日から1月3日)は除かれます。対象は、働く方やそのご家族、企業の人事労務担当者です(働く人の「こころの耳電話相談」)。ほかにSNSやメールで相談できる窓口もあります。確認日は2026年10月12日で、受付日時は変わることがあります。
命や安全に関わる状況で、いますぐ助けが必要なときは、この窓口を待たずに、救急(119)や警察(110)、近くの医療機関に連絡してください。
家族や身近な人への伝え方
家族に話すときも、職場への連絡と同じく、事実を短く伝えると伝わりやすくなります。「最近、眠れなくて食欲もなく、受診した。医師から休養を勧められている。しばらく休むことを考えている」というように、体調、受診の事実、これからの見通しの順に話します。心配をかけたくない気持ちから話しそびれる人もいますが、通院の付き添いや生活面の支えを頼めるのは、身近な人です。
相手が驚いたり、「頑張れば何とかなる」と言ったりすることもあります。そのときは、医師の意見を伝えたうえで、「いまは評価や助言よりも、話を聞いてもらえるだけで助かる」と、してほしいことを具体的に頼むと、行き違いを減らせます。
復職前の不安の整理を手伝ってくれる記事も、あわせて使えます(看護師が休職を考える女性へ|理由や手続き、過ごし方・お金の不安)。
よくある質問(FAQ)
- Q1. 新卒でも休職を考えてよいですか?
- 考えてかまいません。休職制度の有無や取得条件は職場の規定で決まるため、まず就業規則を確認し、人事や総務に聞いてください。体調の不安がある場合は、同時に受診して医師の意見を聞くことが大切です。職場の規定は「こころの耳」でも休業前に確認するよう案内されています(職場復帰のガイダンス「職場との連絡、相談等」)。
- Q2. 休職するには診断書が必要ですか?
- 必要かどうかは職場の規定によります。厚生労働省の手引きに沿った流れでは、労働者が主治医の診断書(病気休業診断書)を提出して休業が始まると整理されています。診断書の書式や提出先は職場に確認してください(こころの耳「15分でわかる職場復帰支援」)。
- Q3. 傷病手当金はいくらもらえますか?
- 協会けんぽの案内では、1日あたりの金額は、支給開始日以前12か月の標準報酬月額の平均を30で割った額の3分の2です。加入期間が12か月に満たない場合は、低いほうの額を使う扱いがあります。実際の金額は加入先と標準報酬月額によって変わります(協会けんぽ「傷病手当金」)。
- Q4. 休職中に転職活動をしてもよいですか?
- 体調によって異なるため、主治医に相談して決めてください。「こころの耳」は、休業中は仕事から気持ちを切り離して休むことを勧めています。転職活動の可否や時期は体調によって異なるため、まずは回復を優先し、始める時期を主治医と話し合うのが一般的な考え方です(職場復帰のガイダンス「メンタルヘルス不調の治療と休業」)。
- Q5. 退職してしまうと、傷病手当金は受け取れませんか?
- 条件を満たせば、退職後も引き続き受け取れる場合があります。資格喪失日の前日までに被保険者期間が継続して1年以上あることなどが必要です。退職日を決める前に、加入先へ確認してください(協会けんぽ「傷病手当金」)。
- Q6. 誰にも話せないときは、どこに相談すればよいですか?
- 職場や家族に話しにくい場合は、「こころの耳」の相談窓口を使う方法があります。電話、SNS、メールで相談できます。電話相談の受付日時は、公式ページで確認してください(働く人の「こころの耳電話相談」)。
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まとめ|休職は、立て直すための選択肢のひとつ
新卒で看護師として働き始めて、心身がつらくなったとき、休職は立て直すための選択肢のひとつです。この記事で整理した内容を、行動の順番にまとめます。
- 体調の変化と時期をメモし、早めに受診して医師の意見を聞く
- 就業規則で、休職の期間の上限や診断書の扱いを確認する
- 職場には、事実と医師の意見を短く、記録が残る形で伝える
- 傷病手当金の条件と申請を、加入先の公式案内で確認する
- 休職中は仕事から離れて休み、復帰の時期は主治医と相談する
- 復職か転職かは、回復してから判断軸を並べて比べる
- 一人で抱えず、主治医、職場、健康保険、公的な相談窓口を使い分ける
どの選択にも、メリットと負担があります。急いで決めず、体調を戻すことを最優先にしてください。制度の詳細は変わることがあるため、手続きの前には最新の公式ページを確認してください。
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