看護師の燃え尽き症候群(バーンアウト)対処法|壊れる前に知っておきたいこと

看護師の燃え尽き症候群(バーンアウト)対処法|壊れる前に知っておきたいこと
📅 公開日: 2026年4月23日🔄 最終更新: 2026年10月30日
目次

この記事でわかること

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  • 看護師の燃え尽き症候群(バーンアウト)とは何か、まず正しく知る
  • 燃え尽きの3つの側面を看護の場面で振り返る
  • うつ病や適応障害との違いは自分では見分けにくいこと
  • 看護職の負担の要因を公的資料で整理する
  • つらさが続くときの見立て方
  • 今できる対処の考え方
  • 職場環境を変える方法
  • 休職という選択肢と傷病手当金
  • 復帰と再発防止
  • 相談窓口と公的な情報源

看護師の燃え尽き症候群(バーンアウト)とは?まず正しく知ること

看護師の燃え尽き症候群(バーンアウト)とは?まず正しく知ることの要点を整理した図解
看護師の燃え尽き症候群(バーンアウト)とは?まず正しく知ることの要点を整理した図解

「最近、仕事に行くのがつらくて仕方ない」「前は患者さんのために頑張れていたのに、今は何も感じない」「休みの日も気が休まらず、ずっと疲れている」。こうした状態が続いているとき、その理由を一つに決めることは、本人にも周囲にもできません。燃え尽きのこともあれば、睡眠不足や体の病気、うつ病や適応障害など、ほかの要因が関わっていることもあります。

この記事は、看護師の燃え尽き症候群(バーンアウト)について、WHOの説明と日本看護協会・厚生労働省などの公的な資料を手がかりに、「何が分かっていて、何は人によって違うのか」を分けて整理したものです。読者の状態を診断したり、回復までの期間を示したりすることはしません。医学的な判断は、医師や産業医に任せてください。

読み進めるときは、次の順番で使うと迷いにくくなります。まず定義を確認し、次に自分の状態を言葉にして振り返り、つらさが続くなら相談や受診へ進みます。そのうえで、職場での調整・休職・転職といった選択肢を比べます。どこから読んでも構いませんが、「今すぐ誰かに話したい」という状態であれば、記事の後半にある相談窓口の一覧を先に開いてください。

燃え尽き症候群の定義とWHOの説明

WHOが2019年に公表した説明によると、燃え尽き症候群はICD-11(国際疾病分類第11版)に「職業に関連する現象(occupational phenomenon)」として掲載されています。同じページでは、医学的な状態(病気)としては分類されていないことも明記されています。つまり、燃え尽きは診断名ではなく、「仕事の場面で起きている状態を説明するための概念」と位置づけられています。

WHOはこの概念を、管理がうまくいかなかった慢性的な職場のストレスから生じる症候群として整理しています。WHOの定義は、職場の状況との関係に着目したもので、個人の気合いや根性の有無を問う内容ではありません。

そのうえでWHOは、次の3つの側面で特徴づけています。ひとつは、エネルギーが尽きたような感覚や疲弊感。もうひとつは、仕事への心理的な距離が広がり、否定的・冷笑的な気持ちが強まること。最後は、職業人としての効力感(自分の仕事が役に立っているという実感)が下がることです。

ここで注意したいのは、この3つは診断の基準でも、順番に進む段階でもないということです。「3つ当てはまったから燃え尽きている」「1つ目から順に悪化する」といった読み方は、WHOの説明にはありません。この記事でも、3つの側面は自分の状態を言葉にするための手がかりとしてだけ使います。

日常的な疲れと、立ち止まるべきつらさ

忙しい時期に疲れるのは自然なことで、それ自体が異常とは限りません。一方で、休みを取っても疲れが残り続ける、仕事に向かう前になると体が重くなる、以前は意味を感じていたことに何も感じない、といった変化が続いているなら、立ち止まって状況を確認する価値があります。

確認する際は、「頑張りが足りないのでは」と自分を責める方向ではなく、「いま何が負担になっているのか」を具体的に見る方向へ視点を向けてください。負担の要因が勤務の組み方や人員配置にあるのなら、解決の入口は個人の努力ではなく、職場への相談になります。

関連記事:看護師辞めたいと思ったら読む記事|休職・転職・副業を考える手順

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燃え尽きの3つの側面を看護の場面で振り返る

燃え尽きの3つの側面とは、WHOが挙げる「疲弊感」「仕事への心理的な距離の広がり」「効力感の低下」のことです。診断のためのチェック項目ではなく、自分の状態を言葉にして、誰かに伝えやすくするための手がかりとして使います。

次の表は、WHOの3つの側面を、看護の場面に置き換えて想像できる例と、振り返りのための問いに並べたものです。例は読者の体験を決めつけるものではなく、あくまで例示です。当てはまる数で結論を出さず、気づいたことを書き留める用途で使ってください。

WHOが挙げる側面 看護の場面で想像できる例(例示) 振り返りの問い
エネルギーの枯渇・疲弊感 勤務が終わると何もする気力が残っていない/休日になっても疲れが抜けた感じがしない 休みを挟んでも疲れが残る状態は、いつ頃から続いているか
仕事への心理的な距離の広がり(否定的・冷笑的な気持ち) 患者さんやご家族への対応に気持ちが向かず、「もういいや」と感じる自分に気づく 距離を置きたくなるのは、特定の人や場面に限られるか、仕事全体に及んでいるか
職業人としての効力感の低下 自分の看護が役に立っている実感を持てない/成長している感覚を持てない 実感を持てなくなった背景に、教育体制や業務量など職場側の事情はないか

3つ目の問いのように、「自分の力不足」と感じていることが、実際には教育の機会や人員体制といった職場の条件に由来している場合もあります。原因を自分の内側に閉じ込めずに、外側の条件も並べて見ることが、次の一手を選ぶときの材料になります。

体や生活に表れる変化を記録しておく

気持ちの面だけでなく、体や生活の変化も記録しておくと、受診や相談のときに状況を伝えやすくなります。次のような変化が続いていないかを見てください。これは診断の材料ではなく、燃え尽きかどうかに関わらず、医療機関や産業医に伝える価値のある情報です。

  • 朝起きても疲れが残っている、または眠れない・寝すぎてしまう
  • 頭痛・肩こり・胃の痛みなどの体調不良が続いている
  • 食欲が落ちた、または食べ過ぎてしまう
  • 動悸や息苦しさを感じる場面がある
  • 出勤前になると強い憂うつ感が出る、仕事中に涙が出そうになる
  • 趣味や好きなことに興味が向かなくなった
  • 休日も仕事のことが頭から離れない
  • イライラしやすくなった、集中力が続かない
  • 飲酒やカフェインの量が増えた

睡眠に関しては、厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」が、不眠や睡眠休養感の低下、業務中の眠気が続いて日常生活に支障が出ている場合は、速やかに医療機関を受診するよう勧めています。当てはまる項目の数ではなく、「生活に支障が出ているか」「続いているか」を基準にしてください。

振り返りメモの書き方(仮の例)

受診や上司への相談の前に、短いメモを作っておくと、緊張していても要点を伝えられます。書く項目は、日付、出来事、体調、気持ち、誰かに話せたかどうかの5つ程度で十分です。以下は、実在の人物や出来事ではない仮の例です。

項目 仮の例の記入 メモをどう使うか
出来事 夜勤明けにそのまま日勤の応援に入った。休憩はほとんど取れなかった 勤務の組み方を相談するときの具体的な根拠になる
体調 帰宅後も眠れず、翌日は頭痛が続いた 受診時に症状の経過として伝える
気持ち 患者さんの訴えを聞いても、以前のように気持ちが動かない 「いつ頃から」「どの場面で」を整理する手がかりになる
誰かに話せたか 同期には話せたが、上司には話せていない 相談先の候補を増やす必要があるかを考える

うつ病や適応障害との違いは自分では見分けにくい

燃え尽きは、WHOが医学的な状態とは分類していない「職業に関連する現象」です。うつ病や適応障害は、医師が診察を通じて判断する別の概念です。症状の見え方が重なる部分もあるため、どれに当たるかを自分で決めることはできません。

インターネット上では、燃え尽きとうつ病を見分ける一覧表がよく見られます。しかし、仕事の場面だけが苦しいのか、生活全般に及んでいるのかといった特徴は、状況や時期によって変わります。自己判断の目安として使うと、実際は受診が必要な状態を「ただの燃え尽き」と見過ごす可能性があります。

大切なのは、名前をつけることよりも、「いまの状態にどんな支援が必要か」を専門職と一緒に考えることです。つらさが長く続く場合は、原因が何であっても、早めに相談する価値があります。「相談するほどのことではない」と感じる段階でも、相談してよいものです。

状況別の最初の相談先

どこへ相談すればよいか迷うときは、次の表を入口にしてください。複数の窓口を並行して使っても構いません。

いまの状況 最初の相談先の例 補足
眠れない・食べられないなど、体調の変化が続いている 心療内科・精神科・かかりつけ医、勤務先の産業医 受診前に、前の項目で作った振り返りメモを持参すると伝えやすい
勤務の組み方や業務量が負担になっている 上司・看護管理者・産業医・人事担当 体調の状況と希望を具体的に伝える(伝え方の例は後述)
まず誰かに話を聞いてほしい 厚生労働省「こころの耳」の電話・SNS・メール相談 同サイトは、匿名・無料で相談できると案内している
死にたい・消えたいという考えが浮かぶ 厚生労働省「まもろうよ こころ」に掲載されている電話・チャット相談 よりそいホットライン(0120-279-338)は24時間無料。緊急性が高いときは救急(119)や身近な人に助けを求める

相談の場では、うまく話そうとする必要はありません。メモを読み上げるだけでも、あるいは「何から話せばいいか分からない」と伝えるだけでも、相談の入口になります。

看護職の負担を整理する|勤務・業務・人間関係

看護職の負担の要因を整理して相談につなげる図解
看護職の負担の要因を整理して相談につなげる図解

看護職の負担の要因として、公的な資料や職能団体の資料が挙げているものを先に確認します。日本看護協会「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」は、看護を、患者の生命と健康を守る社会的意義の大きな仕事であると同時に、強いストレスや緊張感を伴う職業でもあると述べています。そして、夜勤・交代制勤務と長時間勤務などが原因で体調を崩し、生活との両立ができなくなって離職を考えざるを得ない看護職が存在すること、夜勤・交代制勤務と生活の両立の難しさが離職の主な要因の一つとされていることを記しています。

数字の資料としては、日本看護協会が2025年3月に公表した病院看護実態調査(2024年調査)の結果があります。この調査では、2023年度に年度内に離職した新卒看護師がいた病院の看護管理者が考える主な退職理由(上位5つ選択)として、「健康上の理由(精神的疾患)」が52.5%、「自分の看護職員としての適性への不安」が47.4%、「自分の看護実践能力への不安」が41.6%、「上司・同僚との人間関係」が29.8%と報告されています。ただし、これは看護管理者の認識にもとづく退職理由の集計であり、看護師の燃え尽きの割合を示す数字ではありません。

この見出しの問いに数字で答えることは、現時点で確かな資料がないため避けます。代わりに、公的な資料が負担の要因として挙げているものを整理します。夜勤・交代制勤務、長時間労働と休日、人員配置と業務量、人間関係と、命に関わる責任に伴う緊張です。

負担の要因を公的資料で整理する

次の表は、負担の要因ごとに、資料が述べている内容と、職場や自分が見直せる視点を並べたものです。「どの要因が自分に当てはまるか」を考えるために使ってください。

負担の要因 資料が述べていること 見直しの視点
命に関わる責任と緊張 日本看護協会のガイドラインは、看護を強いストレスや緊張感を伴う職業と位置づけている 気持ちの張りつめを一人で抱えず、振り返りや相談の場を持てているか
夜勤・交代制勤務 厚生労働省の睡眠ガイド2023は、交替制勤務を体内時計の働きに逆らう負担のかかる勤務形態と整理している 勤務と勤務の間の休息が確保できているか、勤務の組み方を相談できるか
時間外勤務と休日 日本看護協会のガイドラインは、夜勤・交代制勤務だけでなく、時間外勤務や十分な休日も併せて考えることを求めている 勤務前後の時間外勤務や休日の取りづらさが続いていないか
人員配置と業務量 同ガイドラインは、業務量に見合った人員が配置されていないことが明らかになれば、人員配置を適正化する必要があるとしている 業務の見直しや人員の相談を、個人の頑張りで埋めていないか
人間関係 病院看護実態調査(2024年調査)では、新卒看護師の退職理由として看護管理者が選んだ項目の上位に、上司・同僚との人間関係が含まれている 質問しにくい雰囲気や指導の受け方が、特定の相手に偏っていないか

対人援助の仕事では、相手に合わせて自分の感情を整える場面が続くことがあります。これは資料の数字ではなく、働き方を振り返るための視点のひとつです。笑顔で対応し続けた日の終わりに、自分の気持ちがどこにも置き場所を持てていないと感じるなら、それも負担の要因として数えてよいものです。

新卒・若手の看護師が気をつけたい点

前述の病院看護実態調査(2024年調査)は、「健康上の理由(精神的疾患)」が病床規模に関わらず新卒看護師の退職理由の主な項目となっているとして、新卒看護師のメンタルヘルスへの支援は大きな課題だとまとめています。入職して間もない時期は、業務を覚えることと環境に慣れることが同時に求められます。つらさを「自分が向いていないから」と結論づける前に、教育体制や指導の受け方、配属先の状況など、職場の条件も合わせて見直してください。

新卒1年目で心身の不調を感じることは、甘えではありません。早めに相談することは、キャリアを守るための現実的な選択です。

関連記事:看護師の夜勤がつらい時の対処法|夜勤なしで働く5つの選択肢

つらさが続くときの見立て方|段階で決めつけない

燃え尽きは、「ステージ1・2・3」のように段階で測るものではありません。WHOの3つの側面は進行の順番を示すものではなく、回復までの期間も一律には示せません。見立ての軸は、いつから続いているか、どの場面で強いか、休むと戻るか、そして安全が脅かされていないかです。

インターネット上では、燃え尽きを3段階や5段階に分け、各段階の回復期間を示す説明を見かけます。しかし、WHOの説明にはそのような段階分けも期間の目安もありません。段階に当てはめて「まだ軽い」「もう重い」と判断すると、本来は早めに相談したほうがよい状態を見過ごしたり、逆に必要以上に不安になったりします。

代わりに、次の4つの軸で状態を見立ててください。点数をつけるのではなく、言葉で書き留めておくと、相談のときにも役立ちます。

  • 期間:つらさや疲れが、いつ頃から続いているか。特定の出来事の後か、徐々にか
  • 場面:強くなるのは、特定の勤務帯・人・業務のときか、仕事全体か、生活全体か
  • 休息との関係:休日や休暇のあとに少しでも戻るか、休んでも変わらないか
  • 日常生活への影響:睡眠・食事・出勤・家事など、基本的な生活に支障が出ているか

早めに受診・相談したいサイン

次のようなサインがあるときは、様子を見るよりも、医療機関・産業医・相談窓口へ早めにつながってください。診断のための基準ではなく、安全を優先するための目安です。

  • 朝になると体が動かず、出勤できない日がある
  • 涙が止まらない、パニックのような症状が出る
  • 眠れない、食べられないといった状態が続き、生活に支障が出ている
  • 「消えたい」「いなくなりたい」という考えが浮かぶ

最後のサインに当たるときは、ひとりで抱えず、今すぐ誰かに伝えてください。厚生労働省「まもろうよ こころ」には、よりそいホットライン(0120-279-338、24時間無料)や、#いのちSOS(0120-061-338、24時間無料)などの電話相談、SNS・チャット相談が掲載されています。

相談メモの例(仮の例)

産業医や上司に話すときのために、次のようなメモを用意しておくと、感情が動いても要点を外さずに伝えられます。以下は仮の例であり、実在の人物や出来事ではありません。

「最近、夜勤が続く週になると眠れない日が増えています。仕事中も集中しづらく、ミスへの不安が強くなっています。勤務の組み方について相談したいのと、体調面で受診したほうがよいか意見をいただきたいです。」

ポイントは、事実(眠れない・集中しづらい)、困っていること、相談したいこと、の3点を短く並べることです。感情を整理しきれていなくても、事実から始めれば伝わります。

今できる対処の考え方|環境・休息・相談・つながり

燃え尽き気味のときの対処は、「気持ちを強く持つ」ことではなく、負担の要因を減らし、休息と相談の経路を確保することです。万能の方法はないため、合うものを選び、合わないものはやめてかまいません。

ここで紹介する方法は、効果が確かめられているとは限らず、合う人もいれば合わない人もいます。また、これらを試しても状態が変わらない、悪化していると感じる場合は、対処法の工夫ではなく、受診や相談の段階に入っているというサインです。

環境から離れてよいと、まず自分に許す

つらい環境にいる間は、「ここで踏ん張らなければ」という考えが強くなりがちです。しかし、心身を損ねてまで続けることが、仕事の責任を果たすことだとは限りません。休暇を取る、勤務を調整してもらう、部署を移る、休職する、職場を変える。こうした選択肢は、逃げではなく、自分の状態に合わせた調整です。

選択肢を実際に使うかどうかは別として、「離れてもよい」と自分に許可を出すだけで、見える景色が変わることがあります。

睡眠と休息を守る

厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、交替制勤務を体内時計の機能に逆らう身体に負担のかかる勤務形態として整理しています。そのため、同ガイドが示す工夫が参考にならない場合もあるとして、実践しても不眠や睡眠休養感の低下、業務中の眠気が続いて生活に支障が出る場合は、医療機関の受診を勧めています。

同ガイドでは、夜勤中の仮眠やカフェインの利用が眠気の改善に役立つ場合があること、ただし仮眠が長すぎるとかえって覚醒後のぼんやり感が出ることも述べられています。睡眠の取り方は、勤務パターンや体質によって合う形が異なります。全員に共通する正解はないため、自分の勤務に合う形を探しつつ、うまくいかないときは相談につなげてください。

関連記事:看護師の夜勤がつらい時の対処法|夜勤なしで働く5つの選択肢

気持ちを書き出してみる

つらさを言葉にして書き出す方法は、気持ちを整理したい人にとって取り入れやすい手段のひとつです。頭の中だけで考え続けるよりも、紙やメモアプリに出したほうが、事実と感情を分けて眺めやすくなることがあります。書く内容は、何がつらかったか、誰に対してどう感じたか、本当はどうしたいのか、といった程度で十分です。

ただし、書き出すことで必ず気持ちが変わるわけではありません。書くこと自体がつらい場合は、無理に続ける必要はありません。書いたメモは、前述の振り返りメモとして、受診や相談の場面でも使えます。

信頼できる人や窓口に話す

同僚・先輩・友人・家族のうち、「つらい」と言える相手がいれば、まずそこから始めてください。身近に話せる人がいない、または身近な人には話しにくいときは、公的な窓口もあります。

相談先を選ぶときは、「話を聞いてほしいのか」「具体的な手続きや制度を知りたいのか」「医学的な判断がほしいのか」を先に決めておくと、窓口を選びやすくなります。

断る・調整を相談する

頼まれたことを断れない、キャパシティを超えても引き受けてしまう、という悩みは珍しくありません。いきなり大きな断り方をする必要はなく、まずは「調整できないか相談する」という形から始めると、相手との関係も保ちやすくなります。

言い方の例(仮の例):「今週は体調が整っていないので、夜勤の組み方について相談させてください」「この業務を引き受けると他の対応に手が回らなくなるので、優先順位を一緒に確認してもらえますか」。断ることは相手を否定することではなく、安全な看護を続けるための調整でもあります。

仕事以外のつながりと、体を動かす時間

職場と自宅の往復だけだと、視野が仕事に偏りやすくなります。趣味の集まり、友人との時間、地域の活動など、仕事とは別の場所があると、気持ちの置き場所が増えます。ただし、気力がないときに無理に予定を入れる必要はありません。余裕のある範囲で、負担にならない形から始めてください。

体を動かすことも同様です。散歩やストレッチなど、無理のない範囲で取り入れるのは一つの方法ですが、疲れが強い日は休むことを優先してください。運動の量や種類に決まった正解はなく、続けること自体が負担になるなら見直してかまいません。

職場環境を変える方法|異動・転職・別の道

職場環境を変える方法は、大きく分けて、今の職場の中で調整する方法と、別の職場へ移る方法、看護職以外の道を考える方法の3つです。いまの負担の要因がどこにあるかによって、合う方法は変わります。

部署異動や勤務の調整を相談する

同じ病院の中でも、部署によって業務の性質や人員体制、職場の雰囲気は異なります。負担の要因が特定の部署や勤務帯にあるなら、異動や勤務の調整は現実的な選択肢です。

相談先は、直属の上司、看護管理者、産業医、人事担当などです。相談しづらい相手がいる場合は、別の窓口から始めても構いません。伝えるときは、体調や業務の状況を具体的に述べ、希望(例:夜勤の組み方の調整、部署の変更の検討)を添えると、話が進みやすくなります。

伝え方の例(仮の例):「最近、夜勤が続く週に眠れない日が増えており、集中しづらくなっています。勤務の組み方を調整いただくか、他の部署での勤務の可能性について相談させてください。」

医療機関の勤務環境改善の仕組み

職場全体の問題として取り組む仕組みもあります。厚生労働省「医療従事者の勤務環境の改善について」は、医療従事者が健康で安心して働ける環境を整えることを目的に、各医療機関が勤務環境改善マネジメントシステムを活用して、現状の把握と改善計画づくりを進めるものと説明しています。取組は各医療機関が自主的に行う仕組みで、都道府県ごとに設置された医療勤務環境改善支援センターが、医療機関の取組を支援する窓口とされています。

個人が直接使える制度かどうかはセンターによって異なる可能性があるため、職場の管理者や人事担当が窓口を活用できるかを確認する材料として知っておくとよいでしょう。

転職を視野に入れる

部署異動や勤務の調整で解決しない場合、転職も選択肢に入ります。看護職の勤務先は病院だけではありません。ただし、働き方の名前だけで「楽になる」とは言えず、同じ職種でも施設ごとに夜勤・オンコール・人員体制は違います。次の表は、勤務先の種類ごとに、求人情報や面談で確認したい点をまとめたものです。

勤務先の種類 求人・面談で確認したい点 自分の負担の要因との照らし方
別の病院・別の病棟 夜勤の体制、教育・指導の体制、病棟の人員配置、相談できる管理者の有無 いまの負担が「職場の人間関係」か「勤務体制」かによって、選ぶ職場が変わる
訪問看護 オンコール(待機)の有無と体制、一人で判断する場面の範囲、同行訪問や相談の仕組み 一人で判断する責任に負担を感じやすいか、じっくり向き合える環境を望むか
クリニック 診療科と業務範囲、診療時間と残業の実態、スタッフの人数と役割分担 夜勤を避けたいのか、医療的な幅を維持したいのか
企業の産業保健(産業看護職) 雇用形態、業務範囲(健康相談・健診対応など)、臨床との違い 臨床の現場から距離を置いて働き方を変えたいか
介護施設 看護職の配置人数、夜間の体制、医療的ケアの範囲 看護職として求められる役割と、自分が望む関わり方が合うか
保育園など 看護職の配置形態、業務範囲、他職種との連携の仕方 これまでの臨床経験をどう活かせるか、新しい分野に挑戦したいか

関連記事:看護師を辞めたい人のための副業・転職完全マニュアル|元看護師が解説

転職活動は、休養を優先すべき状態では後回しにするのも一つの判断です。情報収集だけを先に進める場合も、体調を崩しているときは無理をしないでください。

関連記事:看護師から転職して良かったこと・後悔したこと|訪問看護転職のリアル

関連記事:看護師の退職届の書き方と出し方|円満退職

看護職以外の道を考える

「もう看護職自体を離れたい」と考えることも、あってよい選択肢です。臨床での経験を、産業保健、医療・健康に関わる情報の分野、医療機器や医療関連のサービスなど、別の形で活かす道を検討する人もいます。ただし、どの分野にも固有の厳しさがあるため、辞める前に、実際に働く人の話や求人の中身を確認することをおすすめします。

決断を急ぐ必要はありません。休養と情報収集を並行させながら、「辞める」「続ける」の二択ではなく、勤務形態や職場を変える中間の選択肢も含めて検討してください。

休職という選択肢|判断の目安と傷病手当金

休職は、病気やけがなどで働けない状態にあるときに、職場に籍を置いたまま休む制度で、条件や期間は勤務先の就業規則などによって異なります。休職すべきかどうかは医師の意見を踏まえて決めるもので、自己判断で線を引くことはできません。

休職を考える目安

次のような状態があるときは、休職を含めて、医師や産業医に相談することを真剣に考えてください。

  • 朝になると体が動かず、出勤できない日がある
  • 涙が止まらない、パニックのような症状が出る
  • 「消えたい」という考えが浮かぶ
  • 食事が取れない、体重が急に変わった
  • 眠れない状態が続き、生活に支障が出ている

「休むのは甘えだ」と感じるかもしれません。しかし、働けない状態のまま無理を続けても、状況は好転しにくくなります。休むかどうかを決める場には、医師や産業医の意見を入れてください。

休職の手続きと流れ

休職の制度は職場ごとに異なります。厚生労働省「こころの耳」の働く人向けガイダンスも、休業期間の目安、休業中の保障、復帰時の手続きは職場によって異なるため、休業の前に確認することを勧めています。一般的な流れは次のとおりですが、実際の順番や必要書類は勤務先の規則で確認してください。

  1. 医療機関に相談し、休業の必要性について医師の意見を聞く
  2. 診断書が必要かどうか、様式があるかを、勤務先の規定や担当者に確認する
  3. 上司・看護管理者・人事担当などに、休職したい旨を伝える
  4. 休職期間中の連絡方法や、給与・社会保険料の扱いを確認する
  5. 休職中の収入について、傷病手当金などの制度を確認する

傷病手当金の基本

休職中の収入の支えとなる制度に、健康保険の傷病手当金があります。全国健康保険協会(協会けんぽ)の傷病手当金のページによると、支給には、業務外の事由による病気やけがの療養のための休業であること、仕事に就けない状態であること、連続する3日間を含めて4日以上仕事に就けなかったこと、休業期間に給与の支払いがないこと(給与が傷病手当金より少ない場合は差額が支給される)、という条件を満たす必要があります。

同ページでは、1日あたりの支給額は標準報酬月額をもとにした額の3分の2と説明され、支給期間は支給を開始した日から通算して1年6か月とされています。申請書は「健康保険傷病手当金支給申請書」で、提出先は加入している協会けんぽの支部です。仕事に就けない状態かどうかは、療養担当者の意見などをもとに、仕事の内容を考慮して判断されます。

注意したいのは、このページが協会けんぽの案内であることです。加入している健康保険の保険者(保険証に記載)によって、窓口や申請の方法が異なる場合があります。自分の保険者への確認は欠かさないでください。給付を受けられるかどうかも個別の状況で判断されるため、この記事では見込みを断定しません。

関連記事:看護師のうつ・休職から復帰まで|手続きの流れと復帰前に確認すること

休職中の過ごし方

休職の初期は、「何かを成し遂げる」ことよりも、休養を優先して構いません。スキルアップや復帰に向けた準備は、主治医と相談しながら、状態に合わせて検討してください。休むことに罪悪感を持たなくてよい、と考えることも大切です。

職場から連絡が届くことがあります。こころの耳のガイダンスは、体調が安定しない中で連絡を読んだり返信したりするのは負担になりやすいため、返信が難しい旨を伝え、連絡を控えてもらってもよいとしています。お礼などは、復調してからゆっくり伝えればよいとも述べています。

復帰と再発防止|復帰後の働き方を調整する

休職からの復帰は、本人の「戻りたい」という気持ちだけでなく、主治医の判断と、職場側の復帰支援の手順を通して決めるものです。復帰後に同じ状況へ戻らないよう、働き方の調整を事前に相談しておくことが再発防止の中心になります。

復帰の見極めは、主治医と職場の手順を組み合わせる

厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」(事業場向けの手引き)は、職場復帰支援の流れを、病気休業の開始と休業中のケア、主治医による職場復帰可能の判断、職場復帰の可否の判断と復帰支援プランの作成、最終的な復帰の決定、復帰後のフォローアップという5つのステップで整理しています。主治医の判断が出たあとも、産業医等による精査や、職場での可否の判断を経て復帰が決まる流れです。

こころの耳は、職場によっては復帰を認める回復の目安や、主治医と職場の情報のやり取りに使う書式を用意しているとしています。自分の職場にどのような仕組みがあるかは、休職前または休職中に、人事担当や産業医に確認しておくと安心です。

同じ手引きは、数か月にわたって休業していた労働者に、いきなり発病前と同じ質・量の仕事を期待することには無理があると述べています。また、回復の過程でも状態に波があることを指摘し、復帰後の労働負荷を軽減して段階的に元へ戻す配慮を重要な対策としています。復帰の時期や働き方は、主治医・産業医・本人で話し合って決めてください。

復帰後の環境調整を相談する

手引きの復帰支援プランには、就業上の配慮として、勤務制度の変更や段階的な配慮、業務の制限などの検討事項が挙げられています。看護職の場合は、次のような点が相談の候補になります。

  • 復帰直後の勤務時間や勤務日の調整(段階的に元の勤務へ戻す方法の有無)
  • 夜勤やオンコールの扱い(一時的な免除、回数の調整など)
  • 配属先の見直し(負担の要因が部署にある場合)
  • 産業医や上司との定期的な面談の設定
  • 困ったときに相談できる人・窓口の確認

「以前と同じ働き方に戻る」ことを前提にせず、負担の要因を確認したうえで、どの調整が必要かを話し合ってください。調整が難しい職場であれば、別の環境で働くという選択も含めて検討して構いません。

関連記事:看護師の休職から復帰が怖い時の対処法|復帰しないという選択肢もある

再発を防ぐためのセルフケアの考え方

復帰後は、状態の変化に早く気づける習慣づくりが役に立ちます。決まった型はありませんが、次のような視点を自分の生活に合わせて取り入れてみてください。

  • 休息日を意識して確保する(予定を詰め込みすぎない)
  • 気持ちや体調のメモを続け、変化に気づいたら早めに相談する
  • 仕事以外のつながりや楽しみを、できる範囲で持つ
  • 通院が続いている場合は、自己判断で中断せず、主治医と相談しながら進める
  • 定期的に、「いまの働き方を続けられるか」を自分に問い直す

再発の可能性を完全にゼロにすることはできません。大切なのは、つらさが戻ってきたときに、早めに相談できる経路を持っておくことです。

復帰ではなく「別の道」を選ぶとき

復帰に強い不安が残る場合、看護職として別の環境で働く、あるいは看護職以外の道に進むことも、自分の人生を守るための選択です。「復帰しなければならない」という思い込みに縛られなくて構いません。決める際は、主治医・産業医・信頼できる人と話しながら、焦らずに検討してください。

相談窓口と公的な情報源

燃え尽きや強いストレスについて相談できる窓口は、働く人向けのもの、いのちや生活の困りごと全般を扱うもの、医療機関の勤務環境を扱うものに分かれます。目的に合わせて選び、複数を併用しても構いません。

窓口・情報源 どんなときに使うか 案内されている内容
こころの耳(厚生労働省) 仕事のストレスや職場のメンタルヘルスについて相談したい 働く人のメンタルヘルスのポータルサイト。電話・SNS・メールによる相談を案内し、匿名・無料で相談できるとしている
まもろうよ こころ(厚生労働省) 苦しさやつらさを抱えていて、まず話を聞いてほしい よりそいホットライン(0120-279-338、24時間無料)、#いのちSOS(0120-061-338、24時間無料)などの電話相談と、SNS・チャット相談を掲載している
医療従事者の勤務環境の改善について(厚生労働省) 職場全体の勤務環境改善の仕組みを知りたい 各医療機関の自主的な取組と、都道府県の医療勤務環境改善支援センターによる支援を説明している
看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン(日本看護協会) 夜勤・交代制勤務の組み方を職場に相談する材料がほしい 夜勤・交代制勤務の現状と課題、勤務編成の考え方、負担軽減の取組の進め方を扱っている
傷病手当金(全国健康保険協会) 休業中の収入の制度を確認したい(協会けんぽの場合) 支給の条件、支給額、支給期間、申請書の提出先を案内している

どの窓口も、「相談するほどのことではない」と感じる段階から使ってかまいません。相談の結果、すぐに何かを決める必要もありません。

よくある質問(FAQ)

Q1. 燃え尽き症候群は病気ですか?
WHOは、燃え尽き症候群を「職業に関連する現象」としてICD-11に掲載しており、医学的な状態(病気)としては分類していません(WHOの説明)。ただし、つらさが続くときは、燃え尽きかどうかに関わらず、ほかの要因を含めて医師に相談する価値があります。心療内科や精神科、勤務先の産業医などが相談先になります。
Q2. 燃え尽き症候群で休職できますか?
休職の可否や条件は、勤務先の就業規則と、医師の意見によって決まります。燃え尽きという名前そのものではなく、現在の状態に対して医師がどう判断するかが重要です。まず医療機関に相談し、診断書の要否や様式は勤務先に確認してください(こころの耳のガイダンスも、休業に関する条件は職場により異なるとしています)。
Q3. 休職中の収入はどうなりますか?
健康保険の傷病手当金が利用できる場合があります。協会けんぽの案内では、条件を満たした場合に、標準報酬月額をもとにした額の3分の2が、支給開始日から通算して1年6か月支給されるとされています。加入している保険者によって窓口や手続きが異なる場合があるため、自分の保険者に確認してください。支給の可否は個別に判断されます。
Q4. 燃え尽き症候群からの回復には、どれくらいかかりますか?
一律の期間を示す公的な資料は、この記事では確認できていません。回復の道のりは、原因となっている負担の要因、休養の取れ方、治療や相談の有無によって異なります。「何か月で戻る」という数字に自分を当てはめず、主治医や産業医と、いまの状態に合った見通しを相談してください。
Q5. 新卒1年目でバーンアウトを感じるのは甘えですか?
甘えではありません。日本看護協会の病院看護実態調査(2024年調査)も、新卒看護師のメンタルヘルスへの支援を大きな課題としています。環境に慣れる途中でつらさを感じたら、「向いていない」と結論づける前に、教育体制や配属先の状況を含めて、先輩・看護管理者・産業医などに相談してください。
Q6. 上司に相談しても大丈夫ですか?
信頼できる上司であれば、相談して構いません。相談しにくい場合は、看護管理者、産業医、院内の相談窓口、外部の相談窓口(こころの耳など)から始めることもできます。相談の際は、体調の事実、困っていること、希望をメモにして伝えると、話が進みやすくなります。
Q7. つらい時期に転職活動をしてもいいですか?
情報収集だけを先に始めることは構いません。ただし、強い不調で休養を優先すべき状態のときは、転職活動を急ぐよりも、まず休養と受診を優先してください。判断に迷う場合は、主治医や産業医に、いまの状態で活動してよいかを相談するとよいでしょう。
Q8. 燃え尽きを予防する方法はありますか?
確実に防げる方法を示すことはできません。負担の要因を減らす(勤務の組み方・業務量・人間関係の見直しを相談する)、休息と睡眠を守る、相談できる経路を持つ、といった視点がリスクの軽減に役立つと考えられます。これらを試しても状態が改善しないときは、早めに受診や相談につなげてください。

まとめ|壊れる前に、自分を守ってほしい

この記事では、WHOの説明と日本看護協会・厚生労働省などの公的な資料をもとに、看護師の燃え尽き症候群について整理しました。要点を振り返ります。

  • 燃え尽き症候群は、WHOが医学的な状態とは分類していない「職業に関連する現象」で、診断名ではない
  • WHOの3つの側面は、診断の基準でも進行の段階でもなく、状態を言葉にする手がかりである
  • うつ病や適応障害との区別は自分ではできないため、つらさが続くときは医師や産業医に相談する
  • 看護職の負担の要因は、夜勤・交代制勤務、時間外勤務、人員配置、人間関係、命に関わる責任の緊張など、職場の条件にも目を向けて整理する
  • 対処法に決まった正解はなく、どの方法も効果が確かめられているとは限らない。合うものを選び、改善しないときは相談へ進む
  • 休職・転職・部署異動・復帰後の調整は、いずれも自分の状態に合わせた選択であり、逃げではない

つらさを一人で処理しようとせず、まずは誰かに「いまの状態」を言葉にして伝えてみてください。それが、環境や働き方を見直す最初の一歩になります。

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