看護師の残業代が出ないときは、早出や申し送り後の居残りも含めて、まず「その時間が労働時間か」「勤務の記録が残っているか」「割増賃金が計算されているか」の順に確かめます。
厚生労働省は、割増賃金が支払われない早出や残業を「賃金不払残業」と呼び、労働基準法に違反する違法なものとしています(厚生労働省)。
この記事では、労働時間になる時間の見分け方、記録の残し方、割増賃金の決まりと計算の例、相談先を整理します。厚生労働省の公式ページを2026年11月2日に開いて確認した内容だけを、出典と同じ段落で示します。
残業代が出ない時は三つの順で確かめる
確かめる順は、労働時間にあたるか、始業・終業の記録があるか、割増賃金が計算されているかの三つです。
厚生労働省の「時間外・休日労働と割増賃金」は、時間外に働かせたときは割増賃金を払わなければならないと説明しています。
同じページは、割増賃金が支払われない早出・残業・休日出勤を一般に「サービス残業」と呼ぶが、これは労働基準法に違反する違法なものだとしています。
- その時間は、使用者の指揮命令下に置かれた労働時間か
- 自分の出勤・退勤の時刻は、勤務先と自分の手元で記録できているか
- 残業にあたる時間に、割増の率をかけた賃金が給与明細に載っているか
一つ目で労働時間と言えなければ、残業代の話は始まりません。そこで次の章から順に見ます。
労働時間になる時間の見分け方
労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことです。使用者の明示または黙示の指示で業務をする時間は、労働時間にあたります。
これは厚生労働省の労働時間の適正な把握のためのガイドライン(主なポイント)にある考え方です。
同じ資料は、労働時間かどうかは労働契約や就業規則の定めでは決まらず、客観的に見て業務を義務づけられたといえるかで判断するとしています。
「早出は自主的な扱い」と就業規則に書かれていても、それだけで労働時間でなくなるわけではありません。
| 場面 | 労働時間かを分ける見方 |
|---|---|
| 着替えなどの準備 | 着用を義務づけられた服装への着替えなど、指示された業務に必要な準備行為を事業場内で行った時間は労働時間 |
| 業務後の片付け | 業務終了後の関連する後始末(清掃等)を事業場内で行った時間は労働時間 |
| 呼ばれたらすぐ動く待機 | 指示があれば即時に業務に就くことを求められ、労働から離れられない待機は手待時間として労働時間 |
| 参加が義務の研修・勉強会 | 業務上義務づけられた研修や、指示による業務に必要な学習の時間は労働時間 |
表は、上のガイドライン資料に例として挙げられている場面です。
自主参加と報告された学習や休憩でも、実際には指示で業務をしていたと認められる時間は、労働時間として扱わなければならないとも書かれています。
看護の現場での当てはめ
早出の情報収集や、申し送り後の記録の書き残しは、この表に名前が出てくる場面ではありません。
そのため、上司の指示があったか、終わらせないと帰れない状況だったかを、一つずつ見ます。この判断は事情で変わるので、迷うときは相談先に事実を伝えて確かめてください。
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勤務の記録を自分の手元に残す
使用者には、労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、適正に記録する責務があります。確認は、自分の目で見る現認か、タイムカードなどの客観的な記録で行うのが原則です。
この原則は厚生労働省のガイドライン資料に書かれています。
自己申告制の職場では、申告できる時間外労働の時間数に上限を設け、それを超える申告を認めないといった、適正な申告を妨げる措置はしてはならないとされています。
タイムカードや入退場の記録と、自己申告の時間に著しいずれがあるときは、使用者が実態を調べて時間を直すことも求められています。
勤務先の記録とは別に、自分でも次のように残しておくと、後で事実を説明しやすくなります。
- 出勤した時刻と退勤した時刻を、その日のうちにメモする
- 早出や居残りがあった日は、何の業務で、誰から指示があったかを一行で書く
- 勤務表や給与明細は、写真や控えで手元に残す
この三つのメモは、この記事の提案です。公的な資料が求めている手順ではありません。
割増賃金の決まりと計算の例
時間外労働と深夜(午後10時から午前5時)の労働には、1時間当たりの賃金の25%以上の割増賃金が必要です。法定休日は35%以上です。
厚生労働省の「時間外・休日労働と割増賃金」では、1か月に60時間を超える時間外労働の割増率は50%以上とされています。
| 働いた時間 | 割増の率 |
|---|---|
| 法定労働時間を超える時間外 | 25%以上 |
| 深夜(22時から5時) | 25%以上 |
| 法定休日の労働 | 35%以上 |
| 1か月60時間を超える時間外 | 50%以上 |
表の数字は、上のページに書かれている率です。法定労働時間は1日8時間、週40時間以内とされています(特例措置事業場では週44時間)。
変形労働時間制の職場では、どこからが時間外になるかが勤務先の定めで変わります。就業規則で確かめてください。
計算の仮の例
仮の例として、所定労働時間が1日8時間の職場で、他に残業がなく、毎日15分の早出が労働時間にあたるとします。
月20日なら15分×20日で300分、つまり5時間です。1時間当たりの賃金を1,600円とすると、1,600円×1.25×5時間で10,000円になります(割増率は厚生労働省の25%以上)。
この数字は計算の流れを示すための仮のものです。実際の金額は、勤務先の賃金や所定労働時間で変わります(割増率の出典は厚生労働省)。
月給制では、各種手当を含めた月給額を、1年間における1か月平均所定労働時間数で割って、1時間当たりの賃金を出します。
割増賃金の計算から除くことができる手当は、家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金の七つだけです(厚生労働省)。
夜勤の深夜割増の見方は、看護師の夜勤手当と深夜割増賃金の確かめ方で整理しています。
15分単位の切り捨てや「管理職だから」と言われた時
1日の労働時間は1分単位で計算しなければならず、端数を切り上げるのは問題ありませんが、切り捨てることはできません。
厚生労働省の同じページには、例外も書かれています。1か月の時間外等の合計に1時間未満の端数があるときは、30分未満を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げる処理が認められています。
つまり、毎日の15分ずつを切り捨てる扱いは、この例外とは別のものです。給与明細の時間の数え方を確かめてください。
「役職があるから残業代は出ない」と言われたときは、管理監督者にあたるかが論点です。
同じページによると、管理監督者かどうかは肩書ではなく、経営の決定への参画、労働時間の裁量、地位にふさわしい賃金の三点などの実態で判断されます。
管理監督者でも、深夜割増賃金や年次有給休暇の規定は除外されません。
待機や休憩との関係は、看護師が休憩を取れない時の確かめ方も参考になります。
相談先と請求できる期間
相談先は、都道府県労働局や労働基準監督署内にある総合労働相談コーナーと、夜間・休日に電話できる労働条件相談「ほっとライン」です。
厚生労働省の総合労働相談コーナーのご案内によると、予約は不要で無料です。土日祝日と年末年始は閉庁しています。
労働基準法等の法律に違反する疑いがあるときは、行政指導の権限を持つ労働基準監督署等の担当部署に取り次がれます。
夜間や休日は、労働条件相談「ほっとライン」が使えます。賃金不払残業の相談ができ、無料のフリーダイヤルで、匿名でも相談できます。
ただし、ほっとラインから勤務先への指導などはできないと、同じページに書かれています。
請求できる期間も確認が要ります。賃金請求権の消滅時効は5年に延長されましたが、経過措置で当分の間は3年とされています(厚生労働省の改正概要)。
起算点は賃金の支払日です。古い分ほど期間が過ぎやすいため、気づいた時点で記録を集めて相談します。
よくある質問(FAQ)
- Q1. 残業は申請制で、申請していない残業は出ないと言われました。本当ですか。
- 労働時間かどうかは、就業規則の定めではなく、使用者の明示または黙示の指示で業務をしていたかなど客観的に判断されます(厚生労働省のガイドライン資料)。申請の有無だけでは決まらないため、事実を記録して相談先に伝えてください。
- Q2. パートや夜勤専従でも残業代は出ますか。
- 割増賃金は雇用形態に関わらず、派遣社員、契約社員、パートタイム労働者、アルバイトを含むすべての労働者に適用されます(厚生労働省)。
- Q3. 勉強会や委員会の時間は残業になりますか。
- 参加が業務上義務づけられている研修や、指示による業務に必要な学習は労働時間にあたります(厚生労働省のガイドライン資料)。任意参加かどうかは、実際に義務づけがあったかで見ます。
- Q4. 時間外労働に上限はありますか。
- 時間外労働は原則として月45時間以内、年360時間以内で、36協定の締結と届出が必要です(厚生労働省)。臨時的な特別の事情がある場合の例外は、同じページに条件が書かれています。
- Q5. 何年前の分まで請求できますか。
- 賃金請求権の消滅時効は、経過措置で当分の間は3年です。賃金の支払日から数えます(厚生労働省の改正概要)。
- Q6. 相談すると職場に知られますか。
- 総合労働相談コーナーは、相談者のプライバシーの保護に配慮した対応をするとしています(厚生労働省)。ほっとラインは匿名でも相談できます。
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まとめ
看護師の残業代が出ないときは、労働時間にあたるか、記録があるか、割増賃金が計算されているかの順で確かめます。
労働時間は、就業規則の名目ではなく、使用者の明示または黙示の指示で業務をしていたかで判断されます。出勤と退勤の時刻、早出や居残りの理由は、自分でも手元に残します。
迷ったら、総合労働相談コーナーやほっとラインに事実を伝えて確かめてください。制度は改正されることがあるため、手続きの前に厚生労働省と勤務先の最新の案内も見てください。

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