看護師が有給休暇(年次有給休暇)を取る前に確認することは、自分に付与される日数、年5日の取得義務の対象かどうか、申請の出し方と断られた時の考え方、相談先の4つです。付与日数は、雇入れの日から6か月継続して勤務し、全労働日の8割以上出勤していることを条件に、勤続年数と所定労働日数で決まります(厚生労働省 年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説)。
この記事では、2026年10月21日に開いて確認できた厚生労働省のリーフレット(2023年2月版)、e-Gov法令検索の労働基準法第39条、厚生労働省の総合労働相談コーナーのページに書かれている範囲だけを使います。個々の職場で有給休暇がどう運用されているかは、就業規則と勤務先の担当者に確認が要ります。この記事は法律上の個別の判断ではありません。
転職を考えている場合に、求人票や面接で有給休暇の取りやすさをどう確かめるかは、同じ媒体の看護師から事務職に転職する前に|求人票の読み方と労働条件の確認点に分けています。この記事は、今の勤務先で有給休暇を取る場面に絞ります。
有給休暇を取る前に確認する4つのこと
年次有給休暇とは? 労働基準法第39条に基づき、雇入れの日から6か月継続して勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に与えられる、賃金が支払われる休暇です。パートタイムなど所定労働日数が少ない労働者には、日数が比例して付与されます。
確認の順番を、下の表に整理しました。公式の資料が書いている内容と、勤務先ごとに確かめる内容を分けています。法律の内容はe-Gov法令検索の労働基準法(第三十九条)と、前述の厚生労働省リーフレットで確認しました。
| 確認すること | 公式の資料が書いていること | 勤務先で確かめること |
|---|---|---|
| 付与の条件 | 雇入れの日から6か月継続して雇われ、全労働日の8割以上を出勤していること | 入職日と、これまでの出勤状況の数え方 |
| 付与日数 | 勤続年数と所定労働日数で決まる(次の章の2つの表) | 自分の週所定労働日数と、年間の所定労働日数 |
| 年5日の取得義務 | 年次有給休暇が10日以上付与される労働者は、基準日から1年以内に5日を取得させる義務が使用者にある | 自分の基準日と、これまでに取得した日数 |
| 申請の出し方 | 労働者が請求する時季に与える。事業の正常な運営を妨げる場合は、使用者が他の時季に変更できる | 申請の書式、提出先、勤務表との関係 |
付与日数は勤続年数と所定労働日数で決まる
有給休暇の付与日数とは? 雇入れの日から6か月継続勤務して全労働日の8割以上出勤した労働者に、原則10日が与えられ、その後は勤続年数に応じて増える日数のことです。所定労働日数が少ない労働者は、その日数に応じた比例付与になります。
厚生労働省のリーフレットは、通常の労働者の付与日数を次の表のとおり示しています。継続勤務年数は、雇入れの日からの年数です(厚生労働省 年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説(2023年2月版))。
| 継続勤務年数 | 付与日数(通常の労働者) |
|---|---|
| 6か月 | 10日 |
| 1年6か月 | 11日 |
| 2年6か月 | 12日 |
| 3年6か月 | 14日 |
| 4年6か月 | 16日 |
| 5年6か月 | 18日 |
| 6年6か月以上 | 20日 |
パートタイムなど所定労働日数が少ない労働者は、所定労働日数に応じた比例付与になります。リーフレットによると、比例付与の対象は、所定労働時間が週30時間未満で、かつ週所定労働日数が4日以下、または年間の所定労働日数が216日以下の労働者です。リーフレットの表は次のとおりです(厚生労働省 年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説(2023年2月版))。
| 週所定労働日数(年間の所定労働日数) | 6か月 | 1年6か月 | 2年6か月 | 3年6か月 | 4年6か月 | 5年6か月 | 6年6か月以上 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 4日(169日から216日) | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
| 3日(121日から168日) | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 |
| 2日(73日から120日) | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 |
| 1日(48日から72日) | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
表の読み方を、仮の例で確かめます。これは実在の人物ではなく、表の使い方を示すための例です。週5日勤務のフルタイムで、雇入れの日から2年6か月たった場合は、1つ目の表から12日です。週4日勤務(年間の所定労働日数が180日、週の所定労働時間が30時間未満)で、雇入れの日から1年6か月たった場合は、2つ目の表の「4日」の行から8日です。週以外の期間で所定労働日数が定められている労働者については、条文は年間の所定労働日数で見ると書いています(e-Gov法令検索 労働基準法第39条)。どの行に当たるかは、勤務先の就業規則と労働条件通知書で確かめます。
全労働日の8割以上の出勤という条件には、法律に決まった数え方があります。業務上の負傷や疾病で療養のために休業した期間、育児休業・介護休業をした期間、産前産後の休業の期間は、出勤したものとみなされます(e-Gov法令検索 労働基準法第39条)。これらで休んだ期間があっても、それだけで8割を割ったことにはなりません。
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年5日の取得義務は付与日数10日以上の人が対象
年5日の取得義務とは? 年次有給休暇が10日以上付与される労働者について、使用者が基準日から1年以内に、5日分の時季を指定して取得させなければならないという労働基準法上の決まりです。管理監督者や有期雇用労働者も対象に含まれます。
厚生労働省のリーフレットによると、対象は、法定の付与日数が10日以上の労働者です。比例付与の労働者でも、付与日数が10日以上になれば対象です。前の章の2つ目の表では、週4日勤務なら勤続3年6か月以降、週3日勤務なら勤続5年6か月以降が、これに当たります(厚生労働省 年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説(2023年2月版))。
同じリーフレットは、取得日数の数え方も説明しています。労働者が自分で請求して取得した日数と、労使協定に基づく計画的付与で取得した日数は、5日から差し引かれます。合計が5日に達した時点で、使用者が時季を指定する必要はなく、指定することもできません。半日単位で取得した場合は、1回につき0.5日として差し引けます。時間単位の年次有給休暇は、5日から差し引けません。
使用者が時季を指定する時は、労働者の意見を聴かなければならず、できる限り労働者の希望に沿うよう、聴いた意見を尊重する努力が求められています。取得日を変えたい時は、再度の意見聴取を経て、できる限り希望に沿った時季にすることが望ましいと、リーフレットのQ&Aは書いています。
申請は労働者の請求が原則で、時季変更権の範囲に注意する
時季変更権とは? 労働者から請求された時季に年次有給休暇を与えると事業の正常な運営を妨げる場合に、使用者が他の時季に変更できる権利です。取得そのものを認めない権利ではなく、与える時季を変える権利です。
労働基準法第39条は、有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならないと定め、請求された時季に与えると事業の正常な運営を妨げる場合は「他の時季にこれを与えることができる」と書いています(e-Gov法令検索 労働基準法第39条)。リーフレットは、事業の正常な運営を妨げる場合の例として、同一期間に多数の労働者が休暇を希望し、全員に付与し難い場合などを挙げています。
この「事業の正常な運営を妨げる場合」に、特定の病棟や日の人員配置の事情が当てはまるかどうかは、リーフレットにも条文にも書かれていません。個別の職場の判断は、就業規則と勤務先の担当者、または次の章の相談先で確認することになります。
年次有給休暇を取得したことを理由に、賃金を減らしたり不利益な扱いをしたりしないことも、リーフレットが示しています。皆勤手当や賞与の額を計算する時に、年次有給休暇を取得した日を欠勤として扱うことなどが、不利益な取扱いの例として挙げられています。
申請の伝え方と、残しておく記録
有給休暇の申請とは? 労働者が、年次有給休暇を取りたい具体的な月日を使用者に伝え、その日を休みにしてもらう手続きのことです。リーフレットは、労働者が具体的な月日を指定した場合、時季変更権による場合を除き、その日に与える必要があると書いています。
申請の書式や提出先は、まず勤務先の就業規則で確かめます。リーフレットは、休暇に関する事項は就業規則の絶対的必要記載事項だと書いているので、就業規則の休暇の項目を開いて、申請方法の記載を探します。勤務表の希望休と有給休暇の申請が同じ手続きなのか、別の書式なのかも、ここで確認します。
伝え方の文案を、仮の例として示します。実際の書式がある場合はそちらを優先し、日付と曜日は自分の申請内容に置き換えてください。
| 伝える内容 | 文案(仮の例) |
|---|---|
| 希望する日と種類 | 「○月○日(○曜日)に、年次有給休暇を取得したいと考えています。」 |
| 調整への姿勢 | 「勤務表の調整が必要でしたら、ご相談ください。」 |
| 書式の確認 | 「申請の書式や提出先が決まっていれば、教えてください。」 |
この文案は理由を書く欄を設けていません。申請に理由を書く必要があるかどうかは、リーフレットと条文の確認範囲には書かれていないため、就業規則に従います。口頭で伝えた場合も、いつ誰にどの日を伝え、どう返答があったかを、自分のメモに残しておくと、後で確認する時に役立ちます。使用者側は、年次有給休暇管理簿を労働者ごとに作成し、年休を与えた期間中と期間の満了後3年間保存しなければならないと、リーフレットは書いています。
取れないと感じた時の確認の順番と相談先
有給休暇が取れない時の確認とは? 申請を断られたり、申請しにくかったりする時に、日数、就業規則、申請の記録の順に事実を確かめ、そのうえで相談先に伝えることです。個別の判断は、公的な相談窓口が担います。
確認の順番を、次の表にまとめました。上の行から順に確かめると、相談する時に伝える内容がそろいます。
| 順番 | 確かめること | 確かめ方 |
|---|---|---|
| 1 | 自分の付与日数と残日数 | 前の章の2つの表と、勤務先の勤怠の記録を照らし合わせる |
| 2 | 就業規則の休暇の項目 | 申請の書式、提出先、勤務表との関係を確認する |
| 3 | 申請したことの記録 | いつ誰にどの日を伝えたか、返答はどうだったかをメモで残す |
| 4 | 職場内で解決できない場合の相談先 | 総合労働相談コーナーに、これまでの記録を持って相談する |
厚生労働省の総合労働相談コーナーは、職場のトラブルの相談や解決のための情報提供を行う窓口です。専門の相談員が面談または電話で対応し、予約は不要で、利用は無料です。各都道府県労働局や全国の労働基準監督署内などの378か所に設置されていて、土日祝日と年末年始は閉庁しています。労働基準法などの法律に違反する疑いがある場合は、労働基準監督署など行政指導の権限を持つ担当部署に取り次がれます(厚生労働省 総合労働相談コーナーのご案内)。最寄りの窓口の所在地と電話番号は、このページの一覧で確認できます。
休職や退職を考えている場合は、同じ媒体の看護師が休職を考える前に知っておくべき手続きとお金・復帰に、手続きとお金の確認点を分けています。
よくある質問(FAQ)
- Q1. パートの看護師でも有給休暇は取れますか?
- パートタイムなど所定労働日数が少ない労働者にも、付与日数は所定労働日数に応じて比例付与されます。付与の条件は、雇入れの日から6か月継続して雇われていることと、全労働日の8割以上を出勤していることで、通常の労働者と同じです。具体的な日数は、前の章の2つ目の表で、自分の週所定労働日数の行を見て確かめます。
- Q2. 入職して6か月たっていない時期は、有給休暇を取れませんか?
- リーフレットと条文が示す付与の条件は、雇入れの日から6か月の継続勤務です。リーフレットは、勤務先が法定の基準日より前に年次有給休暇を付与する場合の取り扱いも別に説明しています。6か月たつ前に休める制度があるかどうかは、就業規則と労働条件通知書で確かめてください。
- Q3. 使わなかった有給休暇は、翌年に持ち越せますか?
- リーフレットは、年次有給休暇の請求権の時効は2年で、前年度に取得されなかった年次有給休暇は翌年度に与える必要があると書いています。前年度からの繰り越し分を取得した場合も、その日数分を、使用者が時季を指定すべき年5日から差し引けると、Q&Aに書かれています。
- Q4. 体調が悪い日に、当日になって有給休暇に切り替えられますか?
- 当日の申請や、欠勤から有給休暇への切り替えの扱いは、この記事で確認したリーフレットと条文には書かれていません。勤務先の就業規則と担当者に確かめてください。受診までのつなぎとして有給休暇を使う場合の確認点は、看護師が休職を考える前に知っておくべき手続きとお金・復帰の記事で整理しています。
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まとめ:有給休暇を取る前の確認の整理
有給休暇を取る前は、付与の条件(6か月の継続勤務と全労働日の8割以上の出勤)、付与日数の表、年5日の取得義務の対象か、申請の書式と時季変更権の範囲、記録の残し方の順に確かめると整理しやすくなります。年5日の取得義務は、年次有給休暇が10日以上付与される労働者が対象で、半日単位は0.5日、時間単位は差し引けないと、リーフレットが説明しています。職場内で解決できない時は、総合労働相談コーナーに記録を持って相談できます。個別の職場でどう扱われるかは、就業規則と勤務先の担当者に確認してください。
転職先の有給休暇の取りやすさの確かめ方は、看護師から事務職に転職する前に|求人票の読み方と労働条件の確認点の記事を参照してください。
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